005.愛のない行為
「や・・・やだ・・・ヤメ・・・いやぁ―――・・・っ!!」
静かな静かな雨の降る夜。
廃れたビルの一室で、僕は悲痛な叫びを上げていた。
どんなに声を張り上げても、それは誰にも届かない。
それでも、声を上げずにはいられなかった。
「いやぁっ!!ヤダっ・・・やめて・・・っ!やぁ――・・・っ!!」
どんなに叫んでも、聞き入れてはもらえない。
どんなに祈っても、助けはこない。
どんなに願っても、やめてはもらえない。
どうして、こんなことになったんだろう・・・?
その日、僕はいつものように景吾の家にいた。
2人で楽しい幸せな時間を過ごしていた・・・ハズだったんだけど。
つまらない事でケンカになって、僕は景吾の家を飛び出した。
あてもなく、ただがむしゃらに走っていた。
いつの間にか雨の降ってきていて、僕の制服は雨を吸い込み、ズシリと重くなっていた。
それでも、そんなことは気にせず僕は走った。
走って、走って。
もうどれくらい走っただろう。
今いる場所がどこなのかもわからない。
雨もだんだん激しくなり、辺りには外灯もなくだいぶ暗い。
外を歩いている人はおろか、人家もない。
ただあるのは廃ビルのみだった。
「・・・今、何時なんだろう・・・」
ふっと、そう思って制服の胸ポケットから携帯を出そうと手を入れた瞬間、僕は後ろから殴られ、
意識を手放した。
目を覚ますと、そこは知らない場所だった。
打ちっぱなしのコンクリートの壁と床。
塵とホコリの入り混じった匂い。
僕がいる場所とは反対の奥に窓がある。
窓のガラスは所々割れており、雨が吹き込んでいた。
どうやら、僕は近くにあった廃ビルに連れ込まれたようだ。
雨に濡れ、完全に冷え切った身体に隙間風がつき刺さる。
と、その時僕は身体の異変に気がついた。
腕が動かない。僕が気を失っている間に後ろ手に縛られていたようだ。
「・・・なにがあったんだっけ・・・?」
僕は何でここにいるのか、何で縛られてるのかを思い出そうと小首を傾げていた。
と、そこに20代位の金パツの男がやってきた。
ほっそりとしながらも必要な筋肉はしっかりとついている。
まさに理想系の体格だった。
鈍色に光るジャンバーが印象的な男だった。
また、短く切った髪を桃みたいに立たせている。
その後ろからは、乾ぐらいはありそうな長身の男と、いかにもガラの悪そうな連中がついてくる。
「・・・僕になんか用?」
僕は、金パツの男を睨みながら、低い声音で言った。
でも、男たちはそんなものには動じず、口の端を少し上げてにやにやと笑いながら近づいてくる。
―――逃げなきゃ。
本能がそう警告している。
僕はさっと立ち上がると急いで駆け出した。
しかし、腕を縛られているためうまく走れない。
男たちは"逃がさない"と言ったような余裕の顔をしていた。
僕はそんな男たちに気を取られ、足元を見ていなかった。
何かものがおいてあったらしく、僕は盛大にコケた。
そんな僕を押さえつけ馬乗りになると、金パツの男が僕の耳元で囁いた。
『美人のお兄ちゃんよぉ。俺達を楽しませてくれよ』
「―――・・・っ!!?」
そのまま、男達は僕の服を剥ぎ取り、僕を犯した。
何度も何度も、入れ替わり立ち代り、休むことなく僕を攻め続けた。
逃げることも、抵抗することも出来ない僕は叫び続けた。
声の続く限り叫び続けた。
助けがくるのを祈りつづけた。
やめてくれと願いつづけた。
それでも、この愛のカケラもない行為はずっと続けられた。
静かな、静かな雨の降る夜。
廃れたビルの一室で、僕は悲痛な叫びを上げていた―――・・・。
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