056.独り

SIDE.K





例えばお前が傍にいない時。
例えばお前が隣にいない時。
例えばお前が横にいない時。
オレは無性に寂しくなるんだ。
だから早く―――・・・

周が青学テニス部恒例の夏合宿に行ってしまった。
オレは周のいない部屋で1人、周の帰りを待っている。
「・・・・・・」
何もするコトがなく、ベッドにゴロン・・・と横になると、オレの重みでベッドがギシっと軋んだ。
陽が落ち始め、薄暗くなった部屋はオレの元ココに周がいない事をオレに実感させた。
オレはそんな感覚から逃げるようにシーツに包まる。
すると、シーツに残る周の匂いが、オレの鼻を擽る。
「・・・周・・・」
オレの口をついて出たその言葉は、誰の耳に入ることもなく空気に消えていった。

「くそっ・・・」
“なんでこんなに寂しいんだ・・・”
ボヤいたってしかたないと分かっている。
ボヤいたって周はいないと分かっている。
ボヤいたって変化はないとわかっている。
分かっていてもこのどうしようもない“寂しい気持ち”がオレの心を支配する。
「周・・・」
周が傍にいないだけで、オレはこんなにもダメになるのか・・・。
はぁ・・・っと大きくため息をつきながら、オレは枕元に置いてあるカレンダーを見る。
「・・・・・・」
周が帰ってくるまで後6日。
「もつかな・・・オレ・・・」



例えばお前が傍にいない時。
例えばお前が隣にいない時。
例えばお前が横にいない時。
オレは無性に寂しくなるんだ。
だから、早く帰ってきてくれ。
オレの元へ―――・・・





Fin.