039.表向きは幼馴染
いつまでも、君の隣にいるのはオレだと思ってた。
いつまでも、君の傍にいるのはオレだと思ってた。
いつまでも、君はオレだけのものだと思ってた。
物心つく頃から、オレの傍には君がいた。
物腰の柔らかい微笑みを称えて。
君はいつもオレの傍にいてくれた。
オレが嬉しいときも、哀しいときも。
いつも一緒に君がいた。
それはずっと変わらない未来だと信じていたのに。
「サエ・・・僕んチ、引っ越すんだ・・・」
突然告げられた離別。
―――君がオレの傍からいなくなる・・・?
考えもしなかった未来が、
いや、故意に考えないようにしていた未来が
現実になってしまった。
そして、君はオレの元から去っていった。
それでも、オレ達の関係は変わらないものだと思っていた。
―――オレが、自分の気持ちに気付くまでは。
「サエ、僕・・・恋人が出来たんだ・・・」
少し恥ずかしそうに、はにかみながら。
君がオレにそう告げる。
その時、オレは知ってしまった。
自分の気持ちを。
「すごくかっこよくて優しい人なんだ」
オレは君のことが好きだったんだ。
「今度、サエにも紹介するね」
誰よりも、君のことを・・・
「その人・・・男の人なんだけど・・・」
―――愛していたんだ。
「軽蔑・・・するかい? 僕のこと・・・」
なぜ・・・
なぜ君の隣にいることを許されたのがオレじゃない?
なぜ君の傍にいることを許されたのがオレじゃない?
なぜ君の横にオレはいない―――・・・?
どうしてもっと早くに気付かなかったんだ。
自分の気持ちに。
そうすれば、君をオレのものに出来たかもしれないのに。
どろどろとした醜い嫉妬が、オレの中で渦巻いている。
だけど・・・
「・・・今、幸せなんだろう・・・?」
「・・・うんっ!」
だけど、君があまりにも幸せそうに笑うから。
君の彼氏っていう場所は景吾に譲ってやるよ。
君に対するオレのこの感情が
君にとって必要ないものなら。
オレは一生隠しとおしてみせる。
表向きは仲の良い幼馴染を演じてやる。
それで君が幸せならば
オレはそれでもかまわない―――・・・
Fin.
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