030.ビデオ鑑賞
「侑士〜ッ!!」
授業の終わった教室に、オレの相方の声が響く。
「なんや、岳人」
苦笑しつつ、岳人がいる教室の前のほうへ行く。
「今日、クラブなくなったじゃんっ!」
"みんなでビデオ、見ようぜ!"
にかっと笑う岳人の頭をポンポンっとしてやると
"なにすんだよー!"
と、抗議の声があがった。
「ハハ・・・かんにんや。それで、何見るん?」
オレが問う。
「アレっ!前話題になった・・・」
それは、映画公開時にえらい話題になった。
なんや人気のアイドルが主演を勤めたーゆうてニュースになっとったヤツで、確か今日から
レンタル開始やったヤツや。
「あー・・・アレか。ほんで、誰が来るん?」
こういう場合、場所を提供するんは一人暮らしのオレ・・・やろなぁ。
そう思い、"来るのか"と聞いたところ、岳人は否定もせんとすんなり答えた。
「オレとジローと宍戸と、チョタと樺地と若ッ!」
"まぁ、ジローは寝てるだけだろうけどさぁ"
かかかっと笑う岳人。
「なんや、それやったらクラブのメンバーと変わらんやんか」
苦笑しながら"わかった"とだけ伝え、オレはもう一人の戦友の所へ足を運んだ。
「跡部、お前も一緒にどうや?」
「あ?」
自分の机で帰る準備をしていた跡部を捕まえる。
「ビデオ、オレんチでみんなで見ぃへんかってがっくんが」
跡部曰く"胡散臭い"笑みを浮かべてオレが跡部にそう言う。
すると、跡部はふっとオレから視線を外して一言。
「パス」
と、言った。
「なんや、用事でもあんの?」
「あぁ。SF見に行くんだ。」
―――SF?
「SFって、あの猿の○星とかスター○ォーズとかか?」
"そやけど、今なんかやっとったか?"
オレはSFで思いついたタイトルをあげてみるが、跡部は首を横に振るばかりだった。
「ほなら、なんやの?」
「S・F」
「・・・は?」
「じゃぁな」
それだけ言うと跡部は鞄を持って、さっさと帰ってしまった。
残されたオレは"はぁ〜"とため息をついてうなだれた。
「・・・なんで」
―――なんで普通に『不二に会いに行く』って言われへんねん・・・
そう思うんはオレだけなんやろか・・・?
Fin.
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