022.青空





ポツリポツリと、名残の雨が乾いたコンクリートを濡らしていく。
涙に濡れた君の虚ろな瞳が、黒く淀んだ空を見上げている。
ふ・・・っと、君が消えてしまいそうな感覚に襲われた僕は、そっと君の身体を抱き寄せた。
僕の腕の中にいる君からは、雨の音が静かに聞こえていた―――・・・


「景吾・・・」
その日、青学と氷帝の試合があった。
そう、大会の歴史に残る一戦だった関東大会の1回戦。
僕と景吾は直接戦うことはなかったけれど、強豪・氷帝学園を相手に僕ら青学は苦戦を
強いられた。
5試合では決着がつかず、補欠対決にまで縺れこんだ試合は、本気モードになった
青学ルーキー・越前の勝利で青学が2回戦へと駒を進めた。
だけど、その代わりに景吾率いる氷帝は、関東大会1回戦敗退で、全国へ行けなくなった。

「景吾・・・」

みんなの前では毅然とした態度で頑張っていた景吾だけど、本当は誰よりも悔しかったはずだ。
僕たち3年にとっては、全国へ行く最後のチャンスだったんだ。

「・・・・・・」

僕は、なんて声をかけたらいいのかわからず、ただ震える景吾を抱きしめるしか出来なかった。



「しゅ・・・う・・・?」
かすれた声で景吾が僕を呼ぶ。
「け・・・ご・・・」
「周・・・」
僕の腕を解き、すっと立ち上がる景吾。
そして、僕を力いっぱい抱きしめた。
「景吾・・・?」
「周、大丈夫だ」
"オレはもう大丈夫"
そう言った景吾の顔は、とても晴々としていた。

「周・・・ありがとな」
"傍にいてくれて"
少し照れくさそうにそう言った景吾。
そして、僕の手を取り歩き出した。
「帰ろうゼ」
「うん・・・っ!」



いつの間にか雨も止み、空は一面真っ青な晴天となっていた。
僕と景吾は、太陽の光を一身に浴びながら帰路へとついた。





Fin.