015.あなたの為なら





お前だけを見つめてる。
お前だけを感じてる。
お前だけを求めてる。
お前以外なにもイラナイ―――・・・



「けほけほ・・・」
今日も、いつもみたいにオレの家に遊びに来ていた周は、しきりに咳をしていた。
「どうした、風邪か?」
周の額に手を当てて、熱を計りながらオレが聞く。
「ん・・・大丈夫」
力なく答える周。
しかし、その額は思った以上に熱かった。
「熱があるじゃねーか」
「大丈夫だよ・・・」
にこっと笑う周の顔はいつもより少し赤く、妖艶な美しさを放っていた。
「大丈夫じゃねぇよ・・・」
少しため息混じりにいいながら、オレは周を抱き上げベッドに寝かせた。
「ホントに大丈夫だから・・・」
"ねっ?"と笑いながら身体を起こそうとする周。
「風邪は引きはじめが肝心なんだ。ぐだぐだ言ってねぇでとっとと寝ろ」
ぐいっと周の頭を枕に押し付ける。
「クスクス・・・」
シーツに埋もれながら笑う周。
「んだよ・・・」
部屋の奥にあるバスで洗面器に水を汲み、タオルを用意しながら背中越しにオレは
返事をしていた。
「ホントになんともないのに・・・」
冷たい水を汲んだ洗面器とタオルを持って、ベッドの横に戻る。
それをサイドテーブルの上に乗せた。
「ダメだっつってんだろーが」
洗面器でタオルを絞り、ペチっと周の額にのせてやる。
「過保護だなぁ・・・」
「わりぃかよ」
"そんだけお前が大切なんだ"
っと心の中で呟く。
しかし、俺の考えてることなんてお見通しだと言わんばかりに
「クスクス・・・そんな景吾も好きだよ」
"ありがとう。心配してくれて"
っと周は綺麗な笑顔をオレに向けた。
「わかってんならちゃんと寝てろ」
周の枕もとに腰を降ろし、手の甲で周の頬を撫でてやる。
すると、周はくすぐったそうに目を細めた。
「景吾の手・・・」
ポソっと呟く周。
「ん?」
「冷たくて・・・キモチイイ―――・・・」
と、顔を摺り寄せてくる。
そんな周が可愛くて、愛しくてオレは自然と微笑んでいた。
「そか・・・」
「うん・・・。ねぇ、握ってても・・・イイ?」
少し上目遣いで尋ねてくる。
「あぁ・・・。」
オレは左手を差し出した。

オレの出した手を握ると周は目を閉じた。
「ずっと、傍にいてね・・・」
ぎゅっと手を握る周。
「あぁ。ちゃんとココにいるから、もう寝ろ」
にこっと笑うと、もう片方の手で周の頭をふわっと撫でてやる。
「うん―――・・・」
すると、安心したのか周はすぐに静かな寝息を立てはじめた。
「早くよくなっていつもみたいにオレの傍で笑ってろ」
“オレにうつしてもいいから”
と、寝ている周に軽く口付ける。



お前だけを見つめてる。
お前だけを感じてる。
お前だけを求めてる。
お前以外はなにもイラナイ。
なにもイラナイから・・・。
お前の為ならなんでもしてやる。
だから、早くいつものお前に―――・・・





Fin.