012.コロン





彼がいつもつけているコロン。
どっかのブランドの有名なヤツらしい。
けど、僕にはよくわからない。
ただ言えるのは、
"その匂いが好き"
甘く、それでいて清々しい。
何の香りかわからないケド、
僕は妙にその匂いが好きだった。
なんだか安心できたんだ。

彼にそう言うと、
"バカじゃねーの"
って笑われた。
でも、次の日そのコロンをくれた。
"これ、ブランド物で高いんじゃないの!?"
っていうと
"いーんだよ。オレがやるっつってんだろ?気にすんな"
って、大きな手で頭をポンポンってされた。

嬉しくて、すごく嬉しくて。
僕はすぐにそのコロンをつけてみた。
彼に抱きしめられてるカンジがするのかな?って
密かに期待していた。

でも、何か違った。
"僕の好きな匂いじゃない"
同じ匂いだけど、何か違う。
僕は考えた。
何が違うんだろう・・・?
そして、気がついた。
僕はこのコロンの匂いが好きなんじゃなくて、
"景吾がつけてるコロン"の匂いが好きなんだ。
景吾の匂いが混ざって出来た匂いが好きなんだ。

だから、
このコロンは景吾に返そうと思う。
だって、これは僕の好きな匂いじゃないから。
僕が好きなのは景吾がつけてるコロンだから。
すっと、僕の好きな匂いをつけていてほしいから―――・・・





Fin.