011.好キ嫌イ





栗色のさらさらな髪。
キメ細かく白い肌。
整った面立ち。
人当たりのよさそうな笑顔。
腕の中にすっぽりとおさまりそうな華奢な身体。
それでいて、テニスはとてつもなく強い。
青学テニス部NO.2の天才・不二周助はオレの親友。
誰よりも大切で、
誰よりも信頼してて、
誰よりも大好きなオレの一番。


銀色に輝く髪。
特徴的な泣きボクロ。
すべての人を跪かせるカリスマ性。
人を顎で使うようなオレ様主義。
傲慢で自信過剰。
プライドの高さは天下一品の『孤高の帝王』
名門、氷帝テニス部部長の跡部景吾はオレの宿敵ライバル
誰よりも大切で、
誰よりも信頼してて、
誰よりも大好きなオレの一番を奪った嫌なヤツ。


「跡部なんてキライだ・・・」
ぼそっと呟くオレ。
「なんで?」
不二が不思議そうに聞いてくる。
「なんで不二は跡部なんかがいいの?」
「僕が質問してるのに・・・しかも“なんか”って・・・」
苦笑いの不二。
まぁ、自分の恋人が“なんか”呼ばわりされたらそんな顔にもなるか。
「ねぇ、なんで?」
それでも食いつくオレ。
「なんでって・・・それはね―――・・・」
不二はこそっと、オレに耳打ちをした。

「そっか・・・。でもやっぱり跡部キライだぁ―――ッ!!」
「クスクス・・・」
と、口元を押さえて笑う不二。
そして、一言。
「でも、英二も大好きだよ」
と綺麗な笑顔つきでくれた。
さすがにこの笑顔にはビビったけど、オレもにかっと笑ってお返事。
「オレも、不二だ〜いすきッだよん!」
そして、すっくと立ち上がって
「オレと不二の友情は不滅だにゃ―――ッ!!」
と、叫んだ。


ちなみにあの時不二はオレにこう言った。
“それはね、僕にもわからないんだ。
 人を好きになるのに理由なんてないでしょ?
 ただ、その人のことが一番大切なだけだもの。
 僕にとってそれが景吾だっただけ。
 ただ、それだけだよ。”





Fin.