009.一昼夜





誰の邪魔も入らせない。
ずっと2人だけで―――・・・

「ん・・・」
朝、目が覚めたらまず確認する。
お前の事を。
オレの腕の中で気持ちよさそうに眠るおまえの事を。
シーツの中に埋もれている栗色の髪。
頬にかかりそうなくらい長いまつげ。
あどけない寝顔。
透き通るように白い肌。
そして、その白い肌の上に無数に残る所有の証。
それは昨夜オレがつけたモノ。
オレだけのものの証。
誰にも渡さないという決意の証。
そして、愛している証。
自分がつけたそれを見やりながら、オレは周の髪を弄ぶ。
指で絡めとってみても、サラサラとオレの指をすり抜けていくそれは、まるで絹糸のように細く、
柔らかい。
オレは、その感触を楽しんでいた。
「ん・・・? け・・・ご?」
オレの手の感触に目を覚ましたのか、可愛い寝ぼけた声を上げる周。
「わり・・・起こしたか?」
ポンポン・・・っと頭を撫でてやると、周は嬉しそうに目を細めた。
「ううん、大丈夫」
"何が大丈夫なんだ?"
という疑問がオレの頭をよぎった。
が、"まぁ。寝ぼけてるんだ"と言う事にしておこう。
「景吾?」
返事をしないオレを変に思ったのか、むくりと身体を起こしオレの顔を覗き込んでくる。
「あ・・・なんでもない」
ポンっと周の頭の上に手を置く。
「ヘンな景吾」
クスクス・・・っと笑いながらオレの首に腕を廻す。
そして、オレの唇に自分のそれを重ねる。
「おはよう、景吾」
「あぁ、おはよう」
おはようのキス。
"新婚サンみたいなのがやりたい"と駄々をこねられ、やり始めたオレ達の朝の挨拶。
今さら新婚もないとは思うが、"まぁ、オレも嬉しいからイイか。"なんて思ってたりもする。
「そういや・・・今日、休みだよな?」
なにが・・・とは言わなくてもお互いの言いたいことはわかる。
「うん、景吾もだよね?」
「あぁ」
オレが小さく相槌を打つと、周はにこっと笑った。
それは本当に嬉しそうな笑顔で。
「なら、今日はずっと一緒にいられるんだねっ!」
と言った。
「あぁ」
オレも笑う。

久々の休み。
待ちに待った休み。
いつもはクラブで潰れる休み。
氷帝と青学。
名門といわれる学校のテニス部に所属しているオレ達には、ほとんど休みがない。
たまにあっても、2人がそろって休みになることは少なかった。
でも、今日は珍しく休みが重なった。
だから、オレ達はずっと一緒にいられる。
朝から晩まで。
オレは周を、周はオレを独り占めに出来る。

誰の邪魔も入らせない。
ずっと2人だけで―――・・・





Fin.