006.呼吸
満天の星空の下、
オレは隣で静かな寝息を立てている周をみた。
月明かりでボウっと浮かび上がる白い肌。
頬にかかりそうなくらい長いまつげ。
栗色のサラサラな髪。
何もかもが愛しい。
額にかかっている細く、しなやかな前髪を指に巻きつけてみる。
とても柔らかいそれは、オレの指に絡まらず、するりと抜け落ちる。
何度もそれを繰り返す。
幸福な時間。
オレの一番好きな時間。
オレは、胸のあたりに眼を落とす。
トクン、トクンっと力強い心音。
それに規律正しい呼吸。
それは、生きている証拠。
オレの隣で眠る周が、
生きているという事。
存在しているという事。
周の隣はオレだけの場所。
オレにだけ許された居場所。
誰にも渡さない、オレだけの聖域。
呼吸。
それは、オレの幸せを確認するもの―――・・・
Fin.
←
|